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ワンセグ携帯「NHK受信契約義務無し」地裁判決 なぜ放送法64条の「受信設備の設置」に該当しないの?

携帯でテレビを観れるワンセグ機能が「放送法に定める受信設備の設置に当たらない」としてNHK受信契約の義務がないとのさいたま地裁判決が出ました。

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地デジのテレビ放送を観れるワンセグ機能を搭載した携帯電話を所有していた埼玉県朝霞市の市議会議員の男性が、NHKにワンセグを搭載した携帯電話を所有している場合に受信契約が必要かどうかの問い合わせをしたところ、受信契約の義務があるとの回答があったため、さいたま地方裁判所に「NHK受信契約の義務がないことの確認」を求める訴訟を提起しました。

NHKの受信料の支払いを行わないためにテレビを処分する方が増えていますが、テレビ以外にも地デジ放送を見れる端末はあります。そういった端末の扱いはどうなっているのでしょうか。

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そもそも受信契約の義務ってあるの?

民法という法律では、市民には「契約の自由」があるとされており、お互いの契約の意思がなければ契約は成立しないと定められています。

もちろん、契約の自由だけでは生活や商取引に支障が生じるため、事務管理・不当利得・不法行為という3つの規定もあり、契約をしなくても権利義務が発生することがあります。

例えば、台風の日に隣の家の窓ガラスが割れて雨が室内に吹き込んでいたため、ブルーシートを購入して室内に雨が流れ込まないように窓ガラスに被せた場合、「ブルーシートで応急対応をする」という契約は行っていませんが、隣の人にブルーシートの代金を請求することが出来ます。これが事務管理です。

民法第697条(事務管理)

義務なく他人のために事務の管理を始めた者(以下この章において「管理者」という。)は、その事務の性質に従い、最も本人の利益に適合する方法によって、その事務の管理(以下「事務管理」という。)をしなければならない。 管理者は、本人の意思を知っているとき、又はこれを推知することができるときは、その意思に従って事務管理をしなければならない。

アパートの家賃を振り込む際に間違えて口座番号を間違えてしまい別人に家賃を振り込んでしまった場合、「お金を支払ってもらう契約」は行っていませんが、不当に利益を得た別人に「お金を返して!」と請求できるのが不当利得です。

民法第703条(不当利得の返還義務)

法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。

道を歩いていたら自動車にはねられて大怪我をした場合、契約関係はなくても治療費を請求することができるのが不法行為です。

民法第709条(不法行為による損害賠償)

故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

これらの規定に該当しない場合、契約は意思がないと成立しません。

民事訴訟法の規定により、裁判上の請求で意思表示をすることを債務者に命じる判決が確定し意思表示の擬制(ぎせい)により契約の成立が認められるとしても、判決が確定した時点で契約が成立するといえます。

民事訴訟法第174条(意思表示の擬制)

意思表示をすべきことを債務者に命ずる判決その他の裁判が確定し、又は和解、認諾、調停若しくは労働審判に係る債務名義が成立したときは、債務者は、その確定又は成立の時に意思表示をしたものとみなす

放送法64条の「契約の義務」とは

一方、放送法の規定ではNHKの放送を受信可能な受信設備を設置したものに対し、NHKと契約する義務を定めています。

放送法第64条(受信契約及び受信料)

協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。(後略)

この契約の義務(しなければならない)の条項が「テレビを持っていればNHKと契約しないといけない」という主張の根拠になります。

受信設備とは何か?

それでは、何を持っていれば「受信設備の設置」に該当し、契約の義務があるとされるのでしょうか。NHKの公式サイトによると、

NHKの放送を受信できるテレビ(チューナー内蔵パソコン、ワンセグ対応端末などを含みます)を設置された方に、結んでいただくものです。

との記載があります。これに該当する受信設備は次のようなものがあります。

  • テレビ
  • TVチューナー搭載パソコン
  • ワンセグ搭載携帯電話

他にも、次のようなものが受信設備となる可能性があります。

  • DVDレコーダー
  • ビデオレコーダー
  • テレビ機能搭載カーナビ

では、携帯電話にワンセグ機能がついていれば、受信設備の設置に該当して受信契約の義務が発生するのでしょうか。

放送の受信を目的としない受信設備は対象外

答えは先ほどの放送法64条但し書きにあります。「NHK放送の受信を目的としない受信設備のみを設置した場合、受信契約の義務はない」旨の規定があります。

放送法第64条(受信契約及び受信料)

(後略)ただし、放送の受信を目的としない受信設備又はラジオ放送(音声その他の音響を送る放送であつて、テレビジョン放送及び多重放送に該当しないものをいう。第126条第1項において同じ。)若しくは多重放送に限り受信することのできる受信設備のみを設置した者については、この限りでない

携帯電話は持っているがたまたまワンセグ機能がついているだけであり一度も視聴したことがなく、テレビは所有していないと言ったケースでは、この規定に該当する可能性があります。

今回のさいたま地裁判決は「設置」の定義が問題に

今回の埼玉地裁判決では裁判長は次のように判示しています。

放送法の『設置』という言葉はテレビなどを念頭に一定の場所に据えるという意味で使われてきたと解釈すべきで、携帯電話の所持は受信設備の設置にはあたらない

携帯電話は普段から持ち運んでおり、設置しているとはいえないから、「受信設備の設置」には該当せず、したがって放送法64条の契約の義務はないと判断しています。

「契約の義務があれば意思表示がなくても契約が成立する」といった判断に踏み切っているわけではなく、「携帯電話の所持自体は放送の受信を目的としていない」という但書の規定についてでもなく、設置ではないという理由で契約の義務がないという判断になったのは興味深いですね。

控訴審・上告審に注目

今回のさいたま地方裁判所判決を受けて、NHK広報局は「判決は受信設備の設置についての解釈を誤っている」との見解を示し、控訴するとしています。

地方裁判所を原審とする訴えにおいては高等裁判所へ控訴し、そこでの判決にも納得がいかなければ最高裁判所へ上告することが出来ます。

通常の訴訟であれば控訴したところで事実関係に誤りがあったり、憲法判断など重要性の高い法律上の解釈が要求されるケースでなければ、控訴・上告が棄却(原判決に従い請求を認めないこと)となることもあります。

しかし、今回のケースでは判決内容が全国のNHK契約を行っていない世帯に影響するため、判決の影響力は重大だといえます。テレビは持っていないけど携帯電話は持っているという世帯は少なくはないでしょう。こういった判断に最高裁が慎重な姿勢を見せるかもしれません。

一方、市議の男性も、現状であれはNHKの受信契約は行っていないため、わざわざ「契約がないことの確認を求める訴訟(確認の訴え)」を起こさなくても、契約するまで受信料を支払う必要はありません。それでも今回訴訟を起こしたのは、「受信設備の設置に当たるかどうかの法律判断を裁判所に求めることで結論をハッキリさせたい」という目的があると思われます。

いずれにせよ控訴審・上告審に注目したいところです。

なお、日本のスマートフォン市場で圧倒的シェアを誇るiPhoneは、ワンセグ機能がついておりません。

原告市議さんはiPhoneにするといいかもしれませんね。

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