米Yahooが1100億円で買収したTumblrがわずか3年で無価値に

米Yahoo社が2013年6月になんと11億ドルもの巨額で買収したミニブログサービスのTumblr社買収費用に関して、米Yahoo社が会計上の資産として計上することをやめ、全額を損失に振り替える全損処理(ぜんそんしょり)を行う可能性が出てきました。

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Tumblr

目次

全損処理とは何か?

会計上、現金資産を何かに支出した場合はその支出による効用(得られる利益やメリット等)がすぐに消滅してしまう場合費用損失として扱います。例えば会社の業務を行うためインターネット回線利用料を支払ったとすれば、その費用は通信を利用する権利に変わり、それは月が変われば消滅してしまいますので、費用となります。

しかし、多額の支出を行ったとしても、効用が長期間継続したり、他の価値あるものに変わっただけの場合、現金資産から他の資産に変わっただけですので、資産として帳簿に計上され、価値が減少したり消滅したりしないかぎり貸借対照表(バランスシート)と呼ばれる財務諸表に計上され続けます。

Tumblr社の買収費用11億ドルに関しても、買収したTumblr社は売ろうと思えば他社に売却することもできますし、そこから利益を上げることもできますので、費用や損失ではなく資産として帳簿に計上されます。

ただし、現金以外の資産は時として価値が上下します。例えば自社ビルを建てれば固定資産として帳簿上資産として扱われますが、ビルが老朽化すれば価値は落ちていきます。この価値が落ちる現象を会計上定義し、落ちたとされる理論上の価格分だけ資産を少しずつ減らして費用として計上することを減価償却(げんかしょうきゃく)と言います。多くの固定資産は減価償却の対象となります。

また、買収した企業の株や債券などの有価証券は値上がりや値下がりを繰り返すため、値上がりした時は評価益、値下がりした時は評価損を計上します。

そして、例えば購入した固定資産や企業等の資産が何らかの理由で通常とは異なるスピードで価値が減少したと認められる場合、理論上落ちたとされる価値まで帳簿上の資産を減少させ損失を計上することを減損処理(げんそんしょり)と言います。この減損処理は日本の会計処理にも存在し、例えばある製品の売れ行きが激減したり、会社の設備が自然災害で大損害を受けた時などに減損処理を行ったりします。

そして、今回の米YahooがTumblr事業に行う可能性があるのは全損処理(ぜんそんしょり)となりますので、買収した11億ドルのTumblr事業の帳簿上の企業価値を無価値、すなわち0円として帳簿から消し去ってしまうことを意味します。

全損処理=理論上価値が0円となる

全損処理をすると、帳簿に計上されていた数百億円単位の資産が全て損失になります。損失になるということはそれだけ利益が減ることになり、米Yahooがアメリカ国税庁に納付する法人税が減少することになります。

理論上の価値が0円でないにも関わらず全損処理をすることは法人税を過少に申告することにつながりますので、いわゆる脱税となってしまいます。

したがって、Tumblr事業を米Yahooの財務担当者や会計士が「全損処理する可能性がある」としているということは、「Tumblr事業の実態価値が0円になった可能性がある」ということを意味します

買収金額や帳簿上の金額はあくまで会計上の金額であり、11億ドルで買収したからといって実態価値が11億ドルあるというわけではないことにご注意下さい。

買収を指揮した米Yahoo CEOのマリッサ・メイヤー氏の経営力が問われる

米YahooのCEO(最高経営責任者、社長)としてTumblr社の買収を指揮したのは、創業間もないGoogleに入社しエンジニアとしてGoogle検索・Gmail・Googleマップといった様々なシステム開発に携わり、2008年の「Most Powerful Women(世界で最もパワフルな女性)」で50位にランクインしたマリッサ・メイヤー(Marissa Mayer)さんです。

Google時代は週130時間働いたというほど超多忙なビジネスパーソンとして知られ、世界でもトップクラスに注目される女性企業家なだけに、いかにスマートフォンのアプリビジネスが激戦市場であるかを示しているといえます。

一方、アプリの買収に成功している会社もある以上、米Yahooの株主の中にはマリッサ・メイヤーさんの経営力に不満を持つ者もいるでしょう。

スマホアプリ市場は想像を絶する熾烈な競争の時代へ

数年前までは立ち上げから数年で企業価値が億ドル単位に増加し莫大な資産を築くアプリベンチャー創業者が多かったものの、ここ数年は競争が激化し、スマホアプリ市場はかなり熾烈になっていると感じられます。

https://twitter.com/children0608/status/588602868631896064
https://twitter.com/LMOyuuki/status/635775252207812608

インターネットをパソコンで見る時代から、iPhoneやアンドロイドスマホの普及によりネットをスマホで見る時代に大きく変化し、その流れで多くのスマホアプリ長者が生まれましたが、便利なアプリは一通り出尽くした以上今から新たに作って儲けを出すことは至難の業で、大儲けできるのは全体の2%という調査もあるようです。

それでも50人に1人は大金を稼げるというのは凄いことなのかもしれませんが、スマホアプリ開発にはパソコンやプログラムの知識が必要であり、世界中の賢いエンジニアたちがこぞって開発する中での50人に1人ですので相当な競争かと思います。

facebookのInstagram買収は大成功 命運分かれる

一方、ハーバード大学在学中にfacebookを立ち上げ、前代未聞の若さで世界長者番付にランクインしたアメリカのマーク・ザッカーバーグさんは、社員13人・売上もほとんどゼロに近かったという写真投稿型SNSであるInstagram(インスタグラム)を2012年になんと10億ドル(当時のドル円レートで約810億円)で買収しました。

売上が殆ど無い小さな会社を810億円という巨額で買収した当時、「インスタに810億の価値なんてあるの!?」「競合リスクを減らすためじゃないの?」とかなり話題になっていました。

再度言うがinstagramの会員数は3,000万人。売上はゼロだ。

もちろん将来的に伸びる可能性はある。
ただ、instagramが売上を上げるとしたら
・広告掲載
・カメラの画像加工の一部を個別課金で販売
と言った程度になる。

これまでのapp storeのトップセールスランキングを見る限り、カメラの個別課金でそこまで収益が上がるとは考えにくい。

となると広告収益となってくるのだが、これも800億の利益を上げるのはおそらく厳しい。

引用:instagramに800億の価値はなく、facebookの買収理由は競合リスクを潰すため(サイプロ)

しかし、2015年のInstagramは広告収入だけで6億ドル(1ドル120円として720億円)を売上げ、さらに2017年には広告収入が28億ドル(1ドル120円として3,360億円)になると見込まれております。

さらにユーザー数も他のSNSサービスを差し置いて世界でトップのユーザー増加率を叩きだしており、買収からわずか4年にして爆発的な成功を遂げたといえます。AppApeさんの調査によると、2015年でInstagramのユーザー数増加率は1位です。主に日本やアジアで利用者の多いpixivと異なり、世界中の特に欧米で爆発的にヒットしているInstagramは世界ランクでみれば飛び抜けているかと思います。

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出典 App Ape Laboratory

やはり、わずか1000ドルの資金でfacebookをここまで作り上げたマーク・ザッカーバーグはアプリビジネスの才能がありますね。

マーク・ザッカーバーグ 史上最速の仕事術
マーク・ザッカーバーグ 史上最速の仕事術

https://twitter.com/asterisk37n/status/669310748817014784

【結論】facebookとInstagramはクールだった

facebookの起業をテーマにした映画「ソーシャル・ネットワーク」では、マーク・ザッカーバーグさんがfacebookを拡大させる過程で、どんどん増えるアクセス数を収益化しようと共同出資者のエドゥアルド・サベリンさんが「広告主を探して利益を出そう」と提案しますが、ザッカーバーグさんは「facebookはクールだから広告はダメだ。ファッションと同じで完成もない。」と一刀両断し、両者は仲が悪くなっていきます。

しかし、ザッカーバーグの類まれなる才能を見出したナップスター創業者のショーン・パーカーさんはこうい言います。

facebookはクールだから広告はまだ早い。今早まるとヨーグルトチェーンくらいの平凡な成功で終わるぞ。(魚の)マス(小物)を14匹釣った写真を飾る奴がいるか?(でかいメカジキ1匹を釣り上げろ、facebookに広告をはらずに爆発的に成功しろというメッセージ)

そして、広告をはらずに急成長を遂げたfacebookは完膚なきまでに大成功をおさめます。

https://twitter.com/Haru0110023/status/699255375757910016

Instagramも広告収入は稼ぎますが、しつこい広告はなくとてもクールであり、Twitterのようにビジネスのためセールストークを並べるアカウントも少なく、欧米の著名人を中心に若い女性に人気なアプリです。このクールな感覚がアプリビジネスに最も求められることなのかもしれませんね、ということで締めくくりたいと思います(`・ω・′  )

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